小野ゼミ:2022年度ゼミの内容

 小野潮先生のゼミ紹介文です。


授業内容

 バルザックはスタンダールとともに十九世紀前半のフランス文学を代表する小説家です。

 彼が書いた小説群のかなりの部分は『人間喜劇』の総題のもとにまとめられ、同一人物を複数の小説に跨って登場させる人物回帰の手法によって連結されており、これをもって、バルザックは自分の同時代のフランスを、そっくりそのまま自分の小説世界のなかに取りこもうとする壮大な野心を持っていました。また『人間喜劇』に含まれる小説のそれぞれは、十九世紀フランス社会のある部分を切り取り、そこに時代を越える典型とも言うべき人物群を現出させています。

 本授業では、その『人間喜劇』のなかでももっとも有名な作品である『ゴリオ爺さん』Le Père Goriotを原文の抜粋と、幸いふたつの日本の出版社から出ている文庫本翻訳を用いて講読していきます。原文講読で、フランス語の小説をフランス語で読むという作業をおこなうと同時に、翻訳を用いて、登場人物の描き方、パリの社交界の描き方、犯罪者の世界、父性愛といったさまざまの観点から、バルザックの小説世界を検討していきたいと思います。

 また随時、『人間喜劇』中の他の作品の紹介をおこない、この『ゴリオ爺さん』にとどまらない、バルザックの世界についても皆さんと一緒に探索をおこなっていきたいと考えています。

 それぞれの回の授業はおおよそ3つの要素から構成する予定です。

 1:フランス語を読む際の注意点の解説。

 フランス語の長い文を読む際には、とりわけ注意しておかなければならない点がいくつかあります。それは複数の、そして非常によく使われる用法を持つ語について、その複数の用法をどのように区別していくのかということです。これについて、重要な点を順次取り上げて解説を加えていきます。

 2:フランス語テキスト原文抜粋講読

 白水社から出版されている松村博史編著『対訳 フランス語で読む《ゴリオ爺さん》』をテキストとして用います。1で説明している読解のポイントを具体的にテキスト上で見ていくとともに、翻訳ではなかなか見えてこない原文ならではの味わいを発見していくことを目指します。

 なお、使用するテキストには、フェリエさんによる朗読のCDが付いています。これを十分に活用して、自分でテキストをきちんと音読できるようになることを目指していただきたく思います。

 3:日本語の翻訳を用いて作品全体を検討します。

 この部分では、私のほうで検討すべきテーマを設定するとともに、皆さんにもテーマを考えていただき、それを私がおこなう説明、皆さんにおこなっていただく発表の形で展開していきます。

 

 成績評価は夏と学年末の2度提出していただくレポートと、授業中の発表などを加味しておこないます。

 卒論は必修ではありませんが、なるべく卒論を書きたいという学生を歓迎します。小野の専門は文学ですが、文学だけでなく映画、文化論といったテーマもできる限りで指導します。

 

 使用テキスト:松村博史編著『対訳 フランス語で読む《ゴリオ爺さん》』白水社

        バルザック『ゴリオ爺さん』平岡篤頼訳 新潮文庫 もしくは

        バルザック『ゴリオ爺さん』中村佳子訳 光文社古典新訳文庫 

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