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6月, 2023の投稿を表示しています

前之園ゼミ:「文学研究」の研究②

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 こんにちは、前之園です。以前も紹介しましたが、 私のYouTubeチャンネル では、ゼミ生向けに「『文学研究』の研究」という動画シリーズを公開しています。  2本目の動画では、「文学研究」の意義について、個人的な考えを述べています。文学研究を「外側」から見たとき、どのような社会的役割が見えてくるでしょう?  少しの間、一緒に考えてみませんか?

フランス詩:ポエム=オブジェとの付き合い方

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 こんにちは、前之園です。ブルトンは1934年以降、「ポエム=オブジェ」と呼ばれる作品を作るようになります。蚤の市などで見つけた小さな日用品を張り付けた平面上に詩句を配列するという、「詩なの? オブジェなの?」という作品です。  今回、フランス詩の授業で、最も有名といってよいポエム=オブジェ作品の解説を行いました。ブルトンはポエム=オブジェ作品に原則としてタイトルを付けないので、この作品も無題なのですが、作品内の石膏の卵の表面に記入された「私は見る、私は想像する」という言葉がタイトル替わりによく知られています。 ※全学メールアカウントにログインしてご覧ください。 ポエム=オブジェ解説授業動画  この作品をどう楽しめばよいのか、ひとつの可能性として分かりやすい(?)解釈を授業で示したところ、「あまりにきれいに説明がつきすぎて、読み方が一元化されるのが気に入らない」という感想が出ました。自分の想像力を働かせる余地がない(ように感じた)ことにストレスを感じたのだと思います。(実際には時間的制約から説明していないこともあって、つっこみどころはいろいろとあります。)その後のグループディスカッションで「別の読み方はできないか」と盛り上がっているのを見て、非常にたのもしく思いました。  あなたも、自分だけの読み方を見つけてみませんか? おまけ  ポエム=オブジェに興味を持たれた方は、以下の拙論をご参照ください。 「 アイスランドスパーの詩学―アンドレ・ブルトンの連作ポエム= オブジェ― 」 「 潜在的現実の現働化:アンドレ・ブルトンにおけるポエム = オブジェの詩学 」

前之園ゼミ:本を読む時間

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 こんにちは、前之園です。みなさんは本を読むのは好きですか? 「好きなんだけど、なかなか本を読む時間がとれなくて…」そういう方も多いと思います(かく言う私も同じです)。  だったら、本を読む時間をプレゼントしてしまおう! という企画を思いつきました。それが「ゼミ読書会」です。  「読書会」というと、一般的には「同じ本を読んできた人たちが意見の交換をする会」だと思いますが、「ゼミ読書会」は「本を読む時間のない人たち」を想定している点が大きな違いです。  私の研究室から私物のフランス文学作品(小説・詩集・戯曲の、今回は文庫本のみにしました)を教室に大量に持ち込み、机に並べて、これから読む本をその場で選んでもらいました。(写真の奥の段ボール箱いっぱいに持ってきたので、かなり重い…。)そして、20分間、各人で選んだ本を読み、自分の読んだ本の紹介と読んだ感想を交換し合う、というシンプルな企画です。  ただし、 読むと決めた本は20分の間は交換禁止 としました。そのため、みんな真剣に本を選んでいました。  また、 20分の間は読書以外の行為を禁じる(スマホ含む) というルールも設けました。せっかくなので読書に集中して欲しかったからです。  20分なんて短い時間の読書に、なんの意味があるの? と思う方もいるかもしれませんが、絶対に作品を通読できない制限時間を設けることで、かえってリラックスして作品とつきあえたようです。「速読術」にありがちな「情報収集のための読書」は成立しないため、ゆっくりと自分のペースで読むしかないからです。ページをめくる音しか聞こえないような静かな教室には、効率化とは無縁の深い時間が流れていました。  読書会後のアンケートに「またやりたい」「名前だけしかしらなかった文学作品を読めて嬉しい」といった声があり、今後も機会を見てまた行いたいと思います。  

田口ゼミ:卒論発表、懇親会

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田口卓臣教員のゼミでは、久しぶりに懇親会!  緊張の卒論発表会が無事終わり、慰労会の意味も込めての開催でした! 卒論発表会では、発表もコメントも、質がとても高く、今後に期待が持てます。日頃のグループワークの成果が出ている、と感じた時間でした。 卒論発表の前には、ライティング・ラボの先輩からも、ラボ紹介があり、盛り沢山の一日でした。 ★これまでのゼミの流れ 田口ゼミ:グループで翻訳案を作成 (chuo-bun-futsubun-gobun.blogspot.com) 田口ゼミ:グループで映画を分析 (chuo-bun-futsubun-gobun.blogspot.com) 田口ゼミ:初回授業はワールドカフェで (chuo-bun-futsubun-gobun.blogspot.com)

公開研究会:ウェルベックはなにゆえ現代世界を嫌悪するのか?

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 フランスの現代作家、ミシェル・ウェルベックに関する公開研究会を開催します。 ・タイトル ウェルベックはなにゆえ現代世界を嫌悪するのか ・講師 八木悠允(ロレーヌ大学博士後期課程) ・概要 「私とリベラリスムとの関係はけっして容易ではなかった」──本年発表された『私の人生の幾月か』でウエルベックはこう語る。現代社会の敵対者として知られるこの作家の批判対象は、しかし必ずしも明らかではない(体制?経済?政治?)。本講演では彼の批判の矛先である自由について、初期作品を中心に掘り下げていく。 ・日時 2023年7月1日(土) 15:00~17:30 ・場所 中央大学多摩キャンパス グローバル館501教室 「ミシェル・ウェルベックの文学に関する本格的な研究は、日本では端緒についたばかりです。『ウェルベック発言集』(白水社)を出版し、『リミトロフ』vol.3.でウェルベック特集を編集した若手研究者、八木悠允が、その作品世界に切り込みます。/コーディネーター 田口卓臣」 * * * * * * お申し込みは、締め切らせていただきました。(6月30日)  詳細は以下のチラシをご覧ください。

フランス詩:ヴァリアントの多様性

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 こんにちは、前之園です。フランス詩の授業では ヴァリアントゲーム を行っているのですが、単語を少し変えるだけでイメージががらりと変わるので、履修生の作品を見るのが毎回楽しみです。  読み上げられるヴァリアントの音声を聴いて画面上の文字と違う箇所をあてる、というゲームですが、今回は特別にヴァリアントの日本語訳を紹介します。「解答」を教えてしまうのはマナー違反かもしれませんので、純粋にゲームを楽しみたい方はまずこちらの動画をご覧ください。 もともとの詩句(抜粋)は以下の通りです。 私の前には塩の仙女がいて 子羊の刺繡をほどこされたそのドレスは 海にまで達する そしてそのヴェールは下へ落ちれば落ちるほど山全体を虹色に輝かせる 彼女は日の光を受けて湧き水のシャンデリアのように輝き そして夜の小さな陶芸家たちは月のない彼女の爪を使ってべランドンナのコーヒーサービスセットを完成させた 彼女の雪のように白い星の靴の後ろで奇跡でもおきたかのように時間がもつれる 二匹の白テンの抱擁の中に消える足跡に沿って  「なんのこっちゃ?」と思った方は、「 ブルトンの詩が「わかりやすい」? 」をご覧ください。さあ、どのようなヴァリアントができたのでしょうか? Aチーム 君 の前には塩の仙女がいて 子羊の刺繡をほどこされたそのドレスは 海にまで達する そしてそのヴェールは 時々 、 田園 全体を虹色に輝かせる 彼女は日の光を受けて湧き水のシャンデリアのように輝き そして夜の小さな 陶芸家は 月のない彼女の爪を使ってべランドンナの ティー サービスセットを完成させた 彼女の雪のように白い星の靴の後ろで あわれにも 時間がもつれる 二匹の白テンの抱擁の中で とまり木にとまる 足跡に沿って Bチーム 私の前には 砂糖 の仙女がいて 子羊の刺繡をほどこされたそのドレスは 雲 にまで達する そしてそのヴェールは下へ落ちれば落ちるほど 田園 全体を虹色に輝かせる 彼女は 月 の光を受けて湧き水のシャンデリアのように輝き そして夜の小さな陶芸家たちは月のない彼女の 天使たち を使ってべランドンナのコーヒーサービスセットを完成させた 彼女の雪のように白い星の ほほえみ の後ろで奇跡でもおきたかのように時間がもつれる 二匹の白テンの抱擁の中に消える足跡に沿って  いずれのチームも似たような音の単語を選んでヴァリア

フランス詩:ブルトンの詩が「わかりやすい」?

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 こんにちは、前之園です。今学期のフランス詩の授業では、私の専門とするアンドレ・ブルトンという詩人の詩を解説しています。一つの作品ごとに解説回とグループワーク回の2回の授業を使って、これまで3つの詩篇を紹介してきました。3つ目の詩の授業で、少し驚いたことがあったのでここに書かせてもらいます。  なにに驚いたかというと、「この作品は、これまで読んできた詩よりも分かりやすい」という感想が多く聞かれたのです。  え、ブルトンの詩が分かりやすいって?!  おそらくフランス人でも彼の詩を「分かりやすい」と形容する人は少ないはずです。確かにこれまで授業で取り上げた作品は、いわゆる「自動記述」で書かれたもので、お世辞にも読みやすいものではありませんでした。それと比べれば今回の詩は比較的分かりやすいのかもしれません。とはいえ、教える側としては、嬉しい驚きです。  はたして本当に今回の詩が「分かりやすい」のかどうか、授業での解説の様子を公開しますので(45分、長いです)、興味のある方は確かめてみて下さい。