小野ゼミ:2023年度ゼミの内容

 小野 潮 教員のゼミ紹介です

授業内容

スタンダールはバルザックとともに十九世紀前半のフランス文学を代表する小説家です。

もっとも、彼が生前に刊行したある程度の長さをもつ小説作品は『アルマンス』、『赤と黒』、『パルムの僧院』の三作に留まっています。このうち『アルマンス』を除く二作品が、死後数十年が経過した後、十九世紀の末頃になって、彼をこの時代の代表的小説家として認識させました。とくに『赤と黒』は、個人と社会の葛藤というヨーロッパ近代の社会状況をよく表現した作品として評価されてきました。

 本授業ではこの『赤と黒』Le Rouge et le Noirを、原文の抜粋と、幸いいくつか文庫本でも出ている翻訳を用いて講読していきます。原文講読で、フランス語の小説をフランス語で読むという体験をすると同時に、翻訳を用いて、登場人物の描き方、同時代の社会の表象の仕方、ナポレオンの形象、小説技法といったさまざまの観点からスタンダールの小説世界を探索していきたいと思います。

 また同時に、スタンダールが書いた他の小説作品、また他の文学ジャンルに属する作品(彼は自伝的作品、旅行記、伝記なども残しており、彼の全集に占める割合ではそちらの作品群のほうが多くなっています)と小説作品の関係などについても見ていきます。

 授業はおおよそ次の3つの要素から構成されます。

1:フランス語を読む際の注意点の開設。

   フランス語の長い文を読む際には、とりわけ注意しておかなければならない点がい

くつかあります。それは複数の、そしてとてもよく使われる用法を持つ語について、その複数の用法をどのように区別していくかということです。これについて、重要な点を順次取り上げて、解説を加えていきます。

2:フランス語テキスト原文抜粋講読

   白水社から出版されている『対訳 フランス語で読む《赤と黒》をテキストとして用います。1で説明する読解のポイントを具体的にテキスト上で見ていくとともに、翻訳ではなかなか見えてこない原文ならでの味わいの発見を目指します。なお使用するテキストにはフェリエさんによる朗読のCDが付いていますので、これを十分に活用して、自分でテキストをきちんと音読できるようになることを目指してください。

3:日本語訳を用いて、作品構造の検討

   この部分では、私のほうで検討すべきテーマを設定するとともに、皆さんにもテーマを考えていただき、それを私がおこなう説明、皆さんにおこなっていただく議論、発表の形で展開していきます。

 

成績評価は夏と学年末の2度提出していただくレポートと、授業中の発表などを加味しておこないます。

 卒論は必修ではありませんが、なるべく卒論を書きたいという学生を歓迎します。小野の専門は文学ですが、文学だけでなく、映画、文化論といったテーマでもできる限り指導します。

 

  使用テキスト:小野潮編著『対訳 フランス語で読む《赤と黒》』白水社

         スタンダール『赤と黒』上下、桑原・生島訳、岩波文庫

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