小野ゼミ:2025年度ゼミの内容
小野潮先生は2025年度末に退職されます。小野先生のゼミに所属した場合、2025年度秋に所属ゼミ変更(指導教授変更)の手続きが必要となります。
小野 潮(おの・うしお)
授業内容:
シャトーブリアンの回想録『墓の彼方からの回想』を取りあげます。
19世紀前半に活躍した作家、政治家であるフランソワ・ルネ・ド・シャトーブリアン(1768-1848)の回想録『墓の彼方からの回想』を抜粋して読みます。
シャトーブリアンは「ロマン派の父」とも称される作家で、1830年頃から活躍する後続世代のヴィクトル・ユーゴー、アルフレッド・ヴィニーなどに大きな影響を与えました。『アタラ』『ルネ』『キリスト教精髄』といった彼の著作は、キリスト教文化や中世芸術、フランスの歴史に人々の目を向けさせました。
ただし、現在シャトーブリアンの作家としての名声は、ひとえに『墓の彼方からの回想』という回想録によります。フランス革命を挟んだ、フランス史でも最も激動の時期に生き、自身ある時期にはベルリン、ロンドン、ローマといったヨーロッパを代表する都市でフランス外交代表を務め、外務大臣としてフランスのスペイン出兵を主導までした彼は、単なる時代の観察者ではなく、その時代の立役者のひとりでもありました。こうした彼の経歴によって、この著作は歴史上大きな役割を果たした人物群(ルイ十六世、革命家ミラボー、ナポレオン、ロシア皇帝アレクサンドル一世、オーストリア宰相メッテルニヒ、ルイ十八世、シャルル十世、ルイ=フィリップ王、スタール夫人、レカミエ夫人等)が次々と登場する大パノラマの様相を呈します。
この著作は、自分の人生を語ることがそのまま「歴史」を語ることになるという稀有な人物であり、しかも、すぐれた文学者によって書かれた回想録であり、分量、壮大さ、複雑さにおいても、描き出された著者自身、また登場する人物群の興味深さにおいても、著者が生き、描き出した時代の有為転変の急激さ、さらにはこの回想録から響きわたる声の調子においても比類がありません。
残念ながら、この回想録にはごく一部分を不完全な抄訳したものしか現在まで日本では出版されていません。テキストは原文を抜粋したものと、その部分の小野による和訳をコピーで配布します。
小野の専門は、19世紀初頭の文学で、スタンダール、コンスタン、スタール夫人、シャトーブリアンなどを中心とします。
本年度の小野の専門演習の履修は可能ですが、小野は本年度いっぱいで定年を迎えますので、本年、小野の専門演習を履修していただいた学生諸兄諸姉には、2026年度は違った先生の専門演習を履修していただき、その先生の指導のもと卒業論文、卒業課題研究に取り組んでいただくことになります。
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