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前之園ゼミ:2022年度ゼミの内容

前之園 望先生のゼミ紹介です。   授業内容: 私のゼミでは 20 世紀前半に世界規模で展開された芸術運動であるシュルレアリスム運動を研究対象とします。シュルレアリスム運動は文学・美術それぞれの領域を交差するように発展しましたが、このゼミでは主に文学的側面からのアプローチを行います。シュルレアリスムとは絶対的な「自由」を求める運動です。知らぬ間に私たちの生活を支配し、いつしか当たり前となった「制度的なもの」の姿を暴き、それにゆさぶりをかけ、そこから「自由」になろうと、シュルレアリスト達は徹底的にもがき続けました。皆さんには、このゼミを通して、「制度的なもの」に対して敏感に反応できる、しなやかな感受性を身に着けてもらえたら、と願っています。  世界の見方を相対化する試みとして、 2022 年度はシュルレアリスム独自の詩法の分析と実践を行います。シュルレアリスムの詩法は「出会い」の美学に基づきます。そこでは、通常では結びつかない単語同士が接近し、無関係なはずの出来事同士がつながり、言語空間と物理空間が出会います。その出会いの重要なファクターが「偶然」です。たとえば「優美な屍骸」と呼ばれる言語ゲームでは、折りたたんだ紙を利用して、それぞれの参加者が自分以外の人がなにを書いたかは見ないようにして、好きな単語をそこに書き込みます。最後に全体を通して読むと、予想外の文章が生まれるのです。ゼミではこうしたシュルレアリスム特有の集団性に基づくゲームの実践を通して、シュルレアリスムの詩法の特徴を学びます。もしかしたらその延長で、俳句や短歌にも挑戦してもらうかもしれません。こうしたグループワーク、言語ゲームに積極的に参加してくれる方を本ゼミでは歓迎します。 上記の取り組みと並行して、フランス文学史の知識の確認や、任意の作品の読書などを個別課題として設定します。十分に準備期間を取ったうえで、個人発表動画の作成、および個人発表をしてもらいます。学期末ごとにレポートを提出してもらい、学生間でレポート評価を行うピアレビュー方式も一部取り入れます。成績は授業への参加度とレポート内容に基づいて評価を行います。学術論文の読み方、書き方の基本の紹介にもある程度時間を割きたいと思っています。   主な指導分野: 私の専門はアンドレ・ブルトンの詩学です。 19 世紀以降のフランス詩

田口ゼミ:2022年度ゼミの内容

  田口卓臣先生のゼミ紹介です。   授業内容 :  私のゼミでは毎年、一つのテーマを設定し、フランスと日本の文学や思想、映画、社会問題などを中心に考察しています。これまで扱ったテーマは、「利己と利他」( 2019 )、「幸福とは何か?」( 2020 )、「人間関係、世間、空気」( 2021 )です。 2022 年度は、「「私」とは何か?」というテーマを扱います。 授業方法 :  授業は、「1グループ= 4 名」に分かれたディスカッションをもとに進めます。また、ディスカッションに基づいて、自分たちで資料を集め、役割分担やスケジュールを決めて、発表をしてもらいます。したがって、ゼミ生同士の積極的なコミュニケーションや自発的な活動が必須となります。教員が提示する課題を解くだけの人や、他人と協力して物事を進めるのが苦手な人は、このゼミには向きません。現在、ゼミには、 4 年生 10 人、 3 年生 15 人がいますが、「ディスカッションの時間が充実している」という感想を寄せてくれます。 卒業論文・卒業課題研究 :  私のゼミで「卒業論文」( 4 年次)を選択する人は、どんなテーマを選んでも構いません。ただし、必ずゼミ生全員の前で中間発表をしてもらいます。この発表は、発表者本人だけでなく、ゼミ生全員にとって、大きな勉強の場です。発表の準備は楽ではありませんが、「勉強したい!」という熱意があれば、有意義な時間となるはずです。  一方、私のゼミで「卒業課題研究」( 4 年次)を選択する人は、各年度に扱うテーマが、その年度の卒業課題研究のテーマになる、と考えてください。例えば、 2022 年度に卒業課題研究に取り組むゼミ生(現 3 年次)は、「「私」とは何か?」について執筆することになります。 2023 年度以降のゼミでどのようなテーマを扱うかは決めていませんが、前年度に扱ったことと連続性をもったテーマを設定するつもりです。 田口の専門 :  私の専門は、 17 ~ 18 世紀の思想と文学です。この時代は、傑出した「古典」の時代であり、現代文化の基盤を作りました。  しかし、ゼミでは、そうした「古典」を念頭に置きつつも、自由に素材や課題を設定していきます。ディスカッションを通して一定の必然性が浮上すれば、フランスや日本以外の文学や文化、社会問題等にも目を向

フェリエゼミ:2022年度ゼミの内容

  ミカエル・フェリエ先生のゼミ紹介です。 テーマ: Langue , littérature et politique chez les écrivains d’expression française   1) 授業概要・内容 :   il s’agit d’étudier dans ce cours des écrivains d’expression française d’Europe, d’Afrique, des Caraïbes et de l’Océan indien. Pour chacune de ces zones géographiques , nous lirons des extraits de textes (écrivains du XXe siècle et contemporains),    en portant notre attention sur leur extraordinaire fécondité linguistique, leurs ressources poétiques et politiques, et les enjeux dont ils sont porteurs pour l’écriture et pour la pensée en ce début de XXIe siècle.   2) 作家 :  Amadou HAMPATEBA (Mali) Aimé CESAIRE (Martinique) Edouard  GLISSANT et Patrick CHAMOISEAU (Martinique) Kateb YACINE (Algérie) Abdelkebir KHATIBI (Maroc) Agota KRISTOF (Hongrie) Emil CIORAN (Roumanie) Antonine MAILLET (Canada) Axel GAUVIN (La Réunion) Le cours fera aussi référence , dans une perspective comparatiste, à des écrivains

小野ゼミ:2022年度ゼミの内容

  小野潮先生のゼミ紹介文です。 授業内容  バルザックはスタンダールとともに十九世紀前半のフランス文学を代表する小説家です。  彼が書いた小説群のかなりの部分は『人間喜劇』の総題のもとにまとめられ、同一人物を複数の小説に跨って登場させる人物回帰の手法によって連結されており、これをもって、バルザックは自分の同時代のフランスを、そっくりそのまま自分の小説世界のなかに取りこもうとする壮大な野心を持っていました。また『人間喜劇』に含まれる小説のそれぞれは、十九世紀フランス社会のある部分を切り取り、そこに時代を越える典型とも言うべき人物群を現出させています。  本授業では、その『人間喜劇』のなかでももっとも有名な作品である『ゴリオ爺さん』 Le Père Goriot を原文の抜粋と、幸いふたつの日本の出版社から出ている文庫本翻訳を用いて講読していきます。原文講読で、フランス語の小説をフランス語で読むという作業をおこなうと同時に、翻訳を用いて、登場人物の描き方、パリの社交界の描き方、犯罪者の世界、父性愛といったさまざまの観点から、バルザックの小説世界を検討していきたいと思います。  また随時、『人間喜劇』中の他の作品の紹介をおこない、この『ゴリオ爺さん』にとどまらない、バルザックの世界についても皆さんと一緒に探索をおこなっていきたいと考えています。  それぞれの回の授業はおおよそ3つの要素から構成する予定です。  1:フランス語を読む際の注意点の解説。  フランス語の長い文を読む際には、とりわけ注意しておかなければならない点がいくつかあります。それは複数の、そして非常によく使われる用法を持つ語について、その複数の用法をどのように区別していくのかということです。これについて、重要な点を順次取り上げて解説を加えていきます。  2:フランス語テキスト原文抜粋講読  白水社から出版されている松村博史編著『対訳 フランス語で読む《ゴリオ爺さん》』をテキストとして用います。1で説明している読解のポイントを具体的にテキスト上で見ていくとともに、翻訳ではなかなか見えてこない原文ならではの味わいを発見していくことを目指します。  なお、 使用するテキストには、フェリエさんによる朗読の CD が付いています 。これを十分に活用して、自分でテキストをきちん

斉木ゼミ:2022年度ゼミの内容

  斉木 眞一先生のゼミ紹介です   授業内容 :     テーマは食を手掛かりに小説と映画を読み解くことです。人間にとって極めて身近な食べるという行為については、それを中心にして広大な文化が形成されていますが、とりわけフランスではその傾向に顕著なものがあります。フランス文化の隅々にまで波及しており、専門演習ではすでに長い間このテーマを掲げていますが、毎年いろいろなことがわかってきて、なかなかやめられません。ゼミという場で大勢の知恵が出され、それがまた新たな発想のきっかけになるという連鎖のおかげです。 授業では一年交代で、小説か映画を取り上げ、そこに描かれた食事風景や食べ物・飲み物の話題などをめぐって、作品の分析と解釈をしていきます。ひとつの作品にはさまざまな事象が互いに関連しながら渾然一体となって描き込まれているわけですから、食を入口としながらも多くのことを考える契機となるはずです。つまり食文化そのものの研究にとどまらず、そこから発展してフランスの文化や文学を総合的に学んでいこうというわけです。 来年度は小説の年です。どの作品にするか、現時点ではまだ決まっていませんが、フランス近・現代の比較的短いものを前・後期一篇ずつということにしようと思っています。フランス語原文と翻訳を併用します。 授業は主に個人あるいは 3 人前後のグループによる口頭発表をもとに進めていきます。教材に沿った課題の詳細を各学期の初めに提示しますので、それにしたがって準備して教室で発表、という段取りです。課題としては、卒業論文・卒業課題研究への第一歩となるよう、作品研究の具体的な手順が体験できるようなものにしています。 主な指導分野      :    19 世紀後半からのフランス小説および文化全般(美術以外)が指導分野です。  専門はプルーストをはじめとする近・現代小説ですが、その時代背景としてさまざまな分野をのぞいているうちに食の重要性、奥深さに気づきました(もともとフランス料理に興味はありましたが)。  そういえばプルーストの小説は、糖分・脂肪分たっぷりで名前も意味ありげなお菓子マドレーヌを食べるところから始まるし、その後もしばしば長い食事の場面を通して多彩な人間模様を描いています。

前之園授業:リレーストーリー

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  私の担当するフランス語学演習のグループワークで、 自分の前の人が設定した質問に答えて さらに質問を加えて次の番の人に物語を回す というリレーストーリーの作成を行いました。 ……何を言っているか分かりませんね(笑) 実際にどのようなストーリーができたか ご覧になった方が早いので、以下にご紹介します。 今回は私が動画(音声なし)に仕立てましたが、次回からは テンプレートのパワーポイントに 直接フランス語を入力してもらうことにします。 (「フランス語でなぞなぞ」はその形式で行いました。) 動画に音声を吹き込んでもらってもおもしろそうですね。      自分の書いた文章が予想外な文章へと展開され  なかなかエキサイティングな体験だったようです。

前之園授業:フランス語でなぞなぞ

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私の担当するフランス語学演習では、Posons une énigme ! と題して 指定されたテーマに沿って解答を設定し、フランス語でなぞなぞを作る、 というグループワークを行いました。 いずれも力作ぞろいでしたので、ここに紹介させていただきます。 あなたのお気に入りのなぞなぞはどれですか? (クイズの答えは秘密です(笑)) 各チームにテンプレートのパワーポイントを配布し、 自分たちでフランス語を入力してもらいました。 いずれも音声なしの動画です。

前之園ゼミ:学生発表動画

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前之園ゼミは今年度はオンデマンドで授業を行っています。 オンデマンドの授業で学生に発表してもらうにはどうすればよいか。 色々と検討した結果、 ゼミ初年度生に発表動画を作成してもらうことにしました。 手順は以下の通りです。 ① 自分で選んだ「フランス文学作品」を読む 。 ② その作品に関する研究論文をひとつ自分で探す。 ③ 自分の読んだ作品、および作品に関する研究論文の内容を紹介する。 ④ 紹介した先行研究を発展させる可能性について検討する。 動画はmanaba上にコース内公開をして ゼミ生にはmanaba上で動画にコメントをしてもらうことにしました。 動画を作る方法を夏休み前に簡単に紹介しただけなのですが 後期開始とともに予想以上のクオリティの動画が次々と提出されました。 公開しても良い、という方の発表動画を以下にご紹介します。 繰り返しになりますが、 彼らはゼミの初年度生でこれまでに動画を作成した経験はゼロでした。 動画に対するコメントも非常に盛り上がりました。 オンラインでのリアルタイム授業の際に「どうだった?」と聞いたところ 「こんなに簡単に動画が作れるとは思わなかった!」 「 自分の作ったものに反応してもらえると嬉しい!!」 「色々と発見があるので来年のゼミ生にもぜひ挑戦して欲しい!!!」 とのことでした。 来年度は対面授業となるはずですが 動画の作成課題も取り入れたいと思っています。

前之園授業:フランス詩

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今年度のフランス詩の授業は、通常はオンデマンド形式でおこなっているのですが  先日、久しぶりにリアルタイムのオンライン授業を行いました。  せっかくのリアルタイム授業なので、オンデマンドではできないことをしたい! ということでおこなったのが「ヴァリアント・ゲーム」です。 と言っても、今回初挑戦のオリジナルゲームなので誰も知らないゲームです(笑)。 出題者は文法上可能な範囲で詩句の一部を入れ替えて音読し 聞いている側は変更箇所をあてるというゲームです。 文字を見ながら音読を聞くのだから簡単にわかるだろうと思っていたらこれが案外難しい。 予想以上に盛り上がり、気づけば予定の時間を大幅に過ぎていました。   あわてて次の企画、「定義ゲーム」です。 1930年前後にシュルレアリスム(ご存じですか?)内部で実践されていた言語ゲームです。 シュルレアリストたちはフランス語でおこなっていましたが、今回は日本語で。 通常では接近させられることのない、意外な組み合わせの定義文が誕生します。 今回も様々な定義が誕生しましたが、その中でも特に出席者に人気があったのが 「 痛みとは何か。それは愛し合うということである。」でした。  私が個人的に好きだったのは次の定義です。 「りんごとはなにか。それは人生の分岐点である。」 私はすぐに白雪姫を思い出したのですが 出席者のおひとりが『旧約聖書』の「創世記」に登場するリンゴにからめた解釈をしていて それは確かに大きな分岐点だ、と納得しました。 このゲーム、ただ遊んでいるように見えて、実は「隠喩」を解釈する練習となっています。